鬼畜1978

BS松竹東急で、「砂の器」「鬼畜」と続けてみる。いったい何回見るんや。どちらも父と子の物語。おいおい泣く。「鬼畜」は東武東上線「男衾(おぶすま)」「川越市」の両駅登場。映画の「男衾」駅は木造屋根の平屋寒駅だが、現在は建て替わっている。「川越市」駅も改築されたが、駅周辺の雰囲気は今も残る。

いまは観光地となった蔵の街「川越」だが、1978年の映画公開当時までは寂れ、「蔵造りの街並みを守ろう」の横断幕が見える。地域有志と商店会の努力で、現在の姿が守られた。「鬼畜」はその契機になったのではないか。

子ども3人を連れ、小川真由美がラーメンを食べる食堂「勝山」(「時の鐘」が見える)は、現在「大山勝山」の名で食堂を続けているという。驚いたな。まるっきり面影は残らなくても、「男衾」駅では一度降りてみたい。

死ぬまでに、短い話でいいから、父と息子の話を書いてみたい。

立川シネマシティで「異人たち」を

20日夕、一人で食べることになり、散歩堂さんを誘うと、立川シネマシティで「異人たち」を見ることを提案される。山田太一原作『異人たちの夏』は大林宣彦監督で映画化されたが、それをイギリスへ移す。大きな改変は脚本家の主人公アランをゲイ(クィル)に設定したことだろう。実体のある幽霊である両親にそのことを告白し、いじめられていた過去についてのわだかまりが、原作とは違う揺れ、異相を生み出す。両親との関係がより複雑になった、といっていいか。実家も庭付き二階家の一戸建てで、自分の子供部屋がそのまま残されている。

アダムに扮したアンドリュー・スコットは、最初見たことがあるなあ、と思い、テレビドラマ『シャーロック』のモリアーティではないかと気づく。同じマンション(住人は2人だけ)のハリーと結ばれるが、じつは幽霊というのは原作通り。ただし大林版のようなホラー、怪談の要素は薄い。きわめて自然に現実との融合がなされる。逆に察しの悪い観客は混乱させるかもしれない。これは原作、大林版を知った上で見たほうがいいと感じた。ミルフィーユのように重なって感興が増すのだ。

立川シネマシティで見たのだが、券売機で券を買うとき、シニア割引がなく2000円でチケットを買ったが、有人窓口に会員(シニアは半年100円)になると、一回1000円で見られると知り、散歩堂さんに「チケット買ってしまったけど、今から会員になって」と交渉してもらい「本当は払い戻しはしないのですが」と言われたがぶじ成立。会員費100円を払って1000円で見られた。えらい違い。立川シネマシティは自転車で20~30分だから、これで新作を見る楽しみができた。「異人たち」は客席がらがらであった。

石坂浩二音無美紀子が若く貧しい、紙芝居に夢を賭ける夫婦を演じる「二人だけの道」最終回を見る。電気を止められる生活に、石坂が紙芝居を止め業界誌記者に就職するが、音無はそれをなじり実家へ戻り別居状態に。しかし……。風雲吹き荒れるエキセントリックな設定が多い今のドラマに比べたら、ほとんど静物画の味わい。石坂が描いた紙芝居の絵を、破ってしまうシーンあり。「ああっ」と声が出る。石坂の原画だもの。値打ちあるよ。今ならカラーコピーを取ったダミーを破るところ。

赤旗」の「試写室」の仕事で、キムタク主演『ビリーブ』をいち早く見る。

「朝日」に紹介記事が出た千葉市美術館の「早世の画家夫妻 板倉鼎・須美子」展を見たいと思う。これを見逃せば、ほとんど見ることはないだろう。

「四月と十月」25周年 50号記念パーティー

パソコンあいかわらず不調。立ち上がるのにひどく時間を要し、トップ画面が出て、アプリ(でいいのか)やソフト(でいいのか)などをクリックしてもうんともすんともいわない。20~30分放置して、おぼろげながらアクセス可能となるが、今度は文字を打っても表示されない。

ユーチューブなどで「重たくなったパソコン解決法」を見るが、その解決に至るプロセスがまた鈍重で先に進めず処置なし。どうしたもんか。苦慮と絶望で、このまま気が狂うかもしれないと、ときどきさいなまれる。買ってまだ4年目なのだが。

5月連休にあわせて締め切り前倒しが始まる。1日でも遅れると、AIの自動送信なのか、催促がくる媒体数種。いや、わかってますって。ぼくは基本的に締め切りを守る方で、遅れても半日なのだが。いらいらしたら負けだぜ、と言い聞かせる。

14日、美術同人誌「四月と十月」50号、創刊25周年記念のパーティが、中野「桃園会館」(築100年近い、村の公民館ふう建物)の舞台つき大広間で開かれる。地方からもやってきて、退会者も参加し、100名近いにぎやかな会となる。後半、演芸など出し物あり。ぼくは歌をうたってくれというのでギタレレを持参。当初「上を向いて歩こう」を歌って祝辞を述べ終わりと思っていた。当日、午前に一回ぐらい歌っておこうと練習。歌詞を見たら「雲の上」とある。牧野さんが北九州で出している地域情報誌が「雲のうえ」。あ、これは替え歌になると、そこから逆算して「100号をめざして歩こう」という替え歌を作る。即製で安直であったが、これは会場でよく受けた。よかった。歌詞をかいておく。

 

「100号をめざして歩こう」

100号をめざして歩こう 絵具がこぼれないように

思い出す創刊の頃 一人ぼっちの夜

100号をめざして歩こう にじんだ同人費を数えて

思い出す 辞めた人 一人ぼっちの夜

 

牧野さんは「雲のうえ」もやっている

そのしわ寄せはさやかさんの上に

 

100号をめざして歩こう 同人がこぼれないように

25年もよくやったね おめでとう「四月と十月」

 

注・「さやかさん」は牧野夫人

会場机の上に、眼を疑うような量の日本酒やウイスキーの瓶が林立。長机にみなさんきちんと座り、これが暴れだしたら大変だが、美術同人誌という分母があり、わきあいあいと紳士淑女の集まりだ。とにかくいい会でした。二次会はパス。

「二人だけの道」

録画したTBSドラマ「二人だけの道」その2を見る。1は見逃し、全3回。1972年放映。

橋田寿賀子脚本、石井ふく子プロデュース。音楽と主題歌歌唱は佐良直美石坂浩二音無美紀子が、紙芝居に夢を賭ける貧しい若夫婦に扮する。紙芝居の絵は石坂自身が描いたというが、小学生の女の子「あゆみちゃん」が浅丘ルリ子そっくり。しかし、大した画力である(二科展入選)。

石坂が自転車を押し、音無がギターを弾きながら荒川土手や畑の道を歩く。荒川区の下町という設定であろうか。紙芝居の場所として境内のち本堂を提供する和尚が大滝秀治。大学出なのに就職せず(石坂は漫画雑誌編集者だったが、エログロに走るのに嫌気がさしてやめる)貧乏暮らし(紙芝居はタダで見せる)をする娘を案じる母に丹阿弥谷津子。石坂は長山藍子と夫婦で子だくさんの貧しい家庭をきりもりするドラマも出演していた。あれもTBSだ。

なにより豪華なのが子役たち。高野「バロム1」浩幸、伊藤「浮浪雲」洋一、斎藤こずえ、新井康之、それに坂上忍と、今から考えると選抜されている。

こういう清潔で正しく、しんみりほのぼのする夢のあるドラマが茶の間から消えてしまった。

昨日は、「ちんとんしゃん」で落語のイベントを聞くという散歩堂さんを誘い、西荻で合流「音羽館」「盛林堂」を覗いて、高円寺「好書会」展へ。散歩堂さんと別れ、ある用事で「コクテイル」ヘ。めちゃ混んでる。客層が昔と少し変わり、若い人が多いか。頼み事、うまくいけばいいが。

金比羅山、無酸素、単独登頂

12日くもり。午前中に、「高校教育」名言コラム原稿、山崎ナオコーラ『文豪お墓まいり記』(これはすぐれたエッセイ)から引用し書き上げる。

午後、思い立って、昭島ビッグの「ブ」まで玉川上水沿いを自転車で向かう。10キロぐらいか。途中、立川市唯一の山「金比羅山」(15メートル)に上り、神社に詣でる。6年ぶりぐらいか。

上水沿いの桜、かなり散り始めたのと、まだ咲き誇るのとがあり。品種や日当たりによっても違うのか。残堀川(水無川)の桜並木はまだじゅうぶん鑑賞に堪える。昭島「ブ」では、けっきょく何も買えず。

今日一日、2媒体への写真のメール送稿にてこずる。3度くらいやっても、届いてないという。絶望的になるが、3月末にドコモを解約(よくぞこれまで払ってきたものよという高額)し、別の契約会社に移るとき、旧ドコモのアドレスが使えなくなる(当たり前だ)ことを忘れていた。なんという凡ミスか。娘に手つだってもらって「Gメール」から送ることを覚える。デジタル通信環境の複雑さにはうんざりだ。手書き原稿からワープロ、ファクスを導入し、ネット送稿へと目まぐるしい変貌についていけない。

 

奥多摩小ハイキング

10日、快晴。「青春18」ラストの日。最初は土浦「つちうら古書倶楽部」へ行き、バスで「つくば」、つくばエクスプレスで返ってこようと計画していたが、直前、水曜は定休だと知る。ちょっと力が抜けて、近場で使うことにする。

ひさびさの奥多摩へ。いったいいつぶりか。駅近くに「柳小路」という狭い飲食の路地があることを知り、そこを歩く。駅舎二階がカフェ&物販(中古の衣料ほか)になっていて、そこで折り返しの電車を待つ。黒い帽子を500円で買う。

観光案内所が親切で、柳小路の場所や、少しハイキングをと言うとコースを考えてくれる。白丸駅から鳩ノ巣、がんばれば古里まで。しかし、鳩ノ巣駅までのアップダウンで消耗し、リタイア。けっこうきつい。最後の峡谷にかかった橋に足がすくむ。自分が高所恐怖症ということを、長らく知らずにいた。きつかったが、半日、「青春18」(本当は往復1500円ぐらいではもったいない)のいい使い方をした。

剣客商売』シリーズはややスピード落ちて、ようやく6巻を読了。国立の桜はもう散りかけているが、奥多摩ではまだ満開に近い。奥多摩駅前も、ゴテゴテといろんなものがないのがかえっていい。立ち食いそば店が一軒ほしいが。柳小路はおすすめ。5分あったら通り抜けられるので、次の電車までの待ち時間にぜひ。とにかく観光案内所が親切でした。