桜が丘パンテオンの自宅落語会

昨日のことを書こうと思うが、ブログ、春陽堂「オカタケな日々」、それに「古書通信」とも重なるネタで、さあ書きわけが難しくなってきた。一頭の肉牛を、どう解体するか、みたいな話である。

昨日は曇り空の下、渋谷へ。ヒカリエと悪名高き新銀座線乗り入れ口ができた東口はまだ工事中。フェンスの狭い通路を何事ならん、人々が通り過ぎていく。本当に剣呑な街になってしまった。前はそんなに人通りのなかった宮益坂も混雑。この坂の上の裏通りにある喫茶「ウィリアムモリス」で林哲夫展が開催中。裏通りの二階、しかも奥階段を上がるというわかりにくい店だが、ドアを押したらほとんど満席。驚いた。

林さんの小ぶりの油絵で、肖像画にまず出迎えられる。宍戸「三月書房」恭一、湯川「湯川書房」誠一、松木八郎、瀧口修造とシブい顔ぶれ。男の顔たちである。ネコの絵もある。デカルコマニーあるいはコラージュの手法の絵は、客が座るテーブル脇の壁にあるため鑑賞できず。席について、相棒の散歩堂さんを待つ。

今日はこれから、渋谷桜丘パンテオンにあるマンションの一室で落語会が開かれる。自宅落語会。三遊亭鳳楽師を迎えて、もう25回になるという。私は10年以上も前に、2度お邪魔している。この日は弟子の鳳笑さんが一席やったので、師匠は「寝床」一席だけ。終わると会場(広いリビング)が宴会場となる。じつに多彩、豊富、美味な料理が次々30~40名分運ばれ、ワイワイと飲み語る。まあ、じつに粋な自宅落語会である。席亭のN夫婦のうち、夫氏がもと編集者で、私の最初の単著『文庫本雑学ノート』を作ってくれた人。中国、インドへたびたび旅行し、お茶、骨董の趣味もある江戸前の趣味人で、こういう人に最初の本を作ってもらえた幸運を思わずにいられない。

大衆芸能通の某大学教授と隣り合わせて、散歩堂さんとあれこれ知識を開陳し、息もぴったり。いつもこの知識に置いていかれるみたいな教授夫人がほほ笑んで見守っている。ぼくが「どうぞ、(散歩堂さんを)連れて帰ってください」というと、ケラケラ笑っておられた。

中村書店のことは「古通」に。S氏が持っていた小さな手帳のことは「オカタケな日々」に書くことにしよう。