町中華で飲ろうぜ

雲なき晴天だが、風がゴウゴウと鳴っている。北風。「南風吹いたら 流れ雲流れて本棚の写真帳色あせたまま」って何の歌だったか(ふきのとう「南風吹いたら」ですよ。ありがとう)。朝から「町中華で飲ろうぜ」のスペシャル版「卵料理」を録画したのを見る。この秀逸な食+酒の番組を見始めたのはいつからか。いっぺんにファンとなり、たいてい録画してチェックし後日に見ている。前半が玉袋筋太郎、後半が坂ノ上茜と吉田秋が交互に出演。食べて、飲む。それだけで1時間たっぷり過ぎていく。最初、てっきりテレ東の番組かと思ったよ。

玉袋の人心掌握術とコメント力に、ほとほと毎回感心させられる。まずは大瓶のビール。633mlの容量を「633は大人の義務教育」と名付けるセンス。ビールを飲む前、喉をさすって「気道確保」、飲んで「洗浄」と、いちいちふるっている。焼酎割りの濃いのを「硬い」というのも感じが出ている。定食の具だけ注文するのを「頭(あたま)だけ」というのも知らなかった。店に入るとき、「どうも、こんちは。玉袋です」と言うが、NHKではNGの不謹慎な芸名を平気に定着させた点もすごい。

玉袋先生は、ガハハと笑い、だみ声で遠慮なくずけずけ言うように見えて、店と店主へのフォローが限りなく繊細で優しい。女子組の二人も、アルコールを一杯だけ口につけ「はい、OKです!」というのでなく、ちゃんと飲み干してお替りする。えらいなあ。どっちもいいが、どっちかというと吉田秋の方がひいき。食べる時、カメラがエロ目線で口元に接近し、「おいおい、カメラさん、近すぎるよ」というナレーション(山路和弘)もいい。いや、玉袋編のラストに吉田拓郎「午前〇時の街」がかかるところを含め、いいとこだらけですよ。家の台所に、ラーメンスープと水溶き片栗粉を常備したい。

さいきん盛んにスペシャルや再放送があるのも人気の証拠であろう。居酒屋に中華、やっぱり食べ物は強いなあ。古本屋で同じような番組を作るのは至難の業なり。本当はそういうの、やりたいんだが。「極める」というEテレの番組で佐藤江梨子さんと、京都の古本屋を一緒に巡ったのは、あれはいつだったか。今より、ぼくもだいぶ痩せていた。