港に小さな船が入ってきて

雨がやんで、涼しい朝だ。これから気温は上がっていくようだ。

まだ、じつは仕組みがよく分かっていないのだが、「古本一括査定.com」のウェブマガジン連載「古本屋見聞録」6回目を送る。今回をもって終了となる。京都で善行堂が「おかざき、ツィッターやってるやろ?」というから、「いや、まったく触ったこともない」と答えると、「いや、そんなことない」と不思議な問答があって、すり合わせると、この「古本屋見聞録」のことだと分かる。へえ、そうなのか。ツィッターで読めるのか。

「港に小さな船が入ってきて 皺のようなさざ波が突堤に寄せてくる」というフレーズが、急に頭に浮かび、そういう光景を、タバコでも吸いながら、ゆっくり眺めていたいものだと思う。この際、かもめも飛ばそうじゃないか。

家にいると、いろいろ頭に浮かぶものだ。開高健『ロマネコンティ・一九三五』(文藝春秋)所収の「玉、砕ける」を単行本で久しぶりに読んだが、完璧な作品ではないだろうか。文章の密度が濃い。この一作で、開高の名は永遠に文学史に刻まれる。

とにかく蔵書を減らすことだ。どうしてもこれだけ、と残す本に開高の『ロマネコンティ』は当然入るだろう。この函入りによる、簡素な装幀はなでさすりたくなる。装画はギュンター・グラス。装幀のクレジットはないが、文春編集者の萬玉さんではないか。本棚にあることだけで、うっとりとする。そういう本だけ、たとえば5000冊だけとか、絞って残せないものか。

盛林堂さんの今月買い取りは中止。コロナ禍の影響がこんなところにも波及している。すでに階段は本で埋まった。追加で、整理していく。