ドラマ「砂の器」で考えた。

繰り返しドラマ化されている松本清張原作『砂の器』の、1977年仲代達矢主演版、全6回再放送をAXNミステリーチャンネルで見る。仲代は名優であるが、映画の大画面で見る分にはいいが、テレビの枠で、あの深刻な眉とギョロ目が出るとやや暑苦しい。ちょっと苦手だなあ。この1977年ドラマ版は、いろんなものをくっつけて、それでテーマがぼやけてしまった、という印象だ。今西(仲代)は、自分の不注意で息子を死なせ(そのことをずっと引きずり)、それがもとで離婚し、別れた妻の妹(真野響子)が夫があるにもかかわらず、今西を慕い、しょっちゅう留守宅に押しかけ、かいがいしく料理を作る(大阪出張にも発作的に追いかけてくる、雨の日、アパート前で傘をさして待つなどストーカー的要素あり)というのは、いくらなんでもやりすぎだろう。この部分が重たすぎる。録画で見たので、途中からこの部分をすっ飛ばした。

真野さんは、とてもきれい。20年前ぐらいか、「アミューズ」の古本特集で半日、担当ライターとして神保町を一緒に歩いたことがある。ウィリアム・ブレイクに強く反応されていて、それで感心した覚えがある。和賀役の田村正和も、物まねされつくした今から見ると、いちいちの仕草や喋り方が芸人によるコントを見ているようだ。もちろん当時は、めちゃくちゃかっこよかったんです。

一人暮らしの仲代がアパートへ帰る途中でいつも、商店街の自販機でカップヌードルと缶ビールを買う場面あり。中年の男やもめのわびしさがよく出ているが、ドラマの時代設定である1974年(長嶋引退)に、そうかコンビニはまだ普及していなかったんだと知る。カップヌードルは1971年発売で100円。74年自販機でいくらだったか。おそらく、今考えるより高かったはず。

仲代も吉村刑事役の山本亘も、場所に関係なくタバコをばかすか吸う。新幹線車内でも吸う。これも、嫌煙権がいきわたった今だと、衝撃の映像であります。脚本の隆巴は仲代夫人の宮崎恭子で、本人も出て、仲代と言葉を交わす。和賀の愛人役の神崎愛も、宮崎と仲代主宰の「無名塾」の女優で、ちょっとごり押し感がありますね。古い京都駅、大阪駅のそれぞれ駅前が映るのはうれしいです。