簡素で美しい文章を

録画した映画『若草物語』1949年MGM、マーヴィン・ルロイ監督版を観る。1933年版のリメイクで、以後、何度か映画化されているはず。ほかを観ていないのになんだが、これがたぶんベスト。だいたい5回は泣きます。内気なベスに近所の老紳士からピアノを贈られ、お礼を言いに(引っ込み思案なベスとしては異例)邸へ行き、紳士にほおずりして礼をいい泣く場面。これは、こちらもおいおい泣きます。

作家を目指してジョー(ジューン・アリスン、稀代の好演)がニューヨークへ行き、同じ家に下宿する教授と出会う。ジョーは教授に小説を書いていると告げる。その媒体が「週刊火山」だと言うので、教授は驚く。あきらかに煽情的で俗悪なタブロイド判の週刊誌だ。ジョーが書く小説を読み、失望したと教授は告げる。それは「公爵の復讐、悪党、殺人、気絶する女」と、バカバカしく低俗な大衆小説だった。しかし、ジョーの才能を認めた教授がこうアドバイスする。

「心に誓うのです。自分の心に響かない文章は一行も書いてはいけません。若い今だからこそ、自分が知る世界を、簡素で美しい文章で書くのです」

すばらしいアドバイスで、のち『若草物語』をオルコットが書く端緒となる。