青柳いづみこ『阿佐ヶ谷アタリデ大ザケノンダ』平凡社

ピアニストで文筆家の阿佐ヶ谷在住、青柳いづみこさんの新著『阿佐ヶ谷アタリデザ大ケノンダ』(平凡社)が出た。いにしえの阿佐ヶ谷文士のことから、現在の町の様子まで資料と体験を通して、ことこまかに描かれている。なんと、このカバーイラストと、章扉イラストを私が担当している。井伏鱒二太宰治上林暁、そして青柳さんの祖父でもある青柳瑞穂などの肖像、そして町などを描いた。ここにカバーの画像が張り付けられればいいのだが、私には無理。検索して、見ていただけるとありがたい。

着色をデザイナー(松田行正+杉本聖士)にまかせたのがよかった。なんともいい感じに仕上がっている。黒色鉛筆でスケッチした私の絵だが、木山捷平は数枚描いてうまくいかず、さらさらとラフに一筆書きのように早描きしたのがいい感じに仕上がった。私の画業のなかでも画期である。将棋盤を除けば1分ぐらいで描いたはず。おもしろいもんである。プロは、これがさっといつでもその態勢で、このタッチを得ることができるはず。それでも、これは描けてうれしい一枚だった。

上林暁も何枚か描いたが、最初に完成したのはわりあい、カチッと硬い絵で、ラフ木山を描いた後、その筆の勢いでもう一枚描いたのが「女たちの阿佐ヶ谷会」の章扉に使われた、本棚を背にした一枚。これは木山のタッチを踏襲してできた絵だ。

絵を描くことは、本職でないだけに、毎回発見がある。自分の技量の領土を開発していく感じだ。もっと絵の仕事が増えてくれたらうれしい。

普通なら、出版に合わせて、トークイベント等の販促が開かれるはずだが、こういう時期なのが惜しい。