「煉瓦女工」と「林哲夫書店開展」

ユーチューブで千葉泰樹「煉瓦女工」を視聴。これはいい。原作は同名短編集で、よく売れたらしく、古書展などで今でも見かける。鈴木信太郎装丁。落語に出てくるような長屋。スラム、と言ってもいい。日雇い、その日暮らしで家賃も滞るような人たちが肩寄せ合って生きている。貧しい娘のヒロインは学校へも行っていない(のち夜間小学区へ。教師は信欣三とこれがぴったり)。これがだれか。なんと矢口陽子であった。ほかしがない浪曲師に徳川夢声とこれもぴったり。あとは左翼劇団の面々のオールスターキャスト。夢声が外で顔を洗っている冒頭シーン、朝刊を配る男に声をかけ、「おい、新聞屋。新聞取ってやるぞ」と声をかけるが無視をして走りさる。夢声が怒るが、三味線弾きの妻が「新聞を取るような家と思われていないのよ」てなことを言う。いいですねえ。ひとから上手いこと言って50銭を借り、それで家賃を払う清川虹子とか。みな、役にはまりまくり、本当に映画のなかで生活しているようだ。

林哲夫書店開展」という変わった個展が、林さんおなじみのギャラリー「島田」で、12月5日~20日まで開催される。場所は神戸市中央区山本通り、最寄り駅は三宮。おもしろいのは、「油彩画、コラージュ、ブックアート」が展示販売されるのは通常だが、そこに林さんの美術書、文学書ほかが即売される。だから「林哲夫書店」だ。林さんのことだから、いい本をぐっと安く放出するに違いない。12日には畏友・戸田勝久さんとトークもあり。水曜休廊にご注意。林さんの油絵は、小ぶりのが善行堂でも展示販売されているが、よく売れるそうだ。