「或る田舎町の魅力」児玉からバスで「暴力の街」舞台の本庄へ。

青春18」を今冬も買う(「大人の休日倶楽部パス」は自粛)。11日第一回目、八高線「児玉」へ。もう10年も前になるか、一度訪れた町。吉田健一「或る田舎町の魅力」で書かれた町で、講演に呼ばれた(児玉高校)際にこの町の静かさが気に入り、数年後、また菊正の小瓶と毛抜き寿司を買って八高線に乗り、児玉へ向かう。このエッセイが大好きで何度読んだかわからない。

このところ吉田健一を読んでいたので、児玉ふたたびの散歩に。駅も寂れた駅前商店街もまったく変わりない。いや、いっそう劣化が進んだか。少し町をぶらつく。吉田健一が投宿した旅館「田島屋」も時間がとまったまま健在。今回は、前は知らなかった古い給水塔を観にいく。役目を終えて、町はずれに屹立して、陸の灯台のようだ。一時間ほどいて、バスで本庄へ。期末試験の時期か、児玉高校らしき高校生が大挙して乗車してくる。みなスマホと恋(アベック2組)に夢中。「きみたち、吉田健一って知っているかい。児玉高校でむかし、講演をしたんだよ」と言いたくなるが自粛。どんどん変なおじさんになっていく。

30分ほどで正午前に本庄へ。山本薩夫監督映画「暴力の街」のロケ地で、本庄事件の舞台になった町。児玉もそうだったが、本庄も飲食店がみごとにまったくない。駅に隣接して立ち食いそばがあるのは気づかなかった。アド街でも紹介されたカレー屋「電気館カレー」が一軒。しかし、昨晩もカレーだったしな。とうとう昼ぬきで街を回遊し、駅近くに中華「みんみん」を見つけ、ようやく昼飯にありつく(あとでもらった観光地図によると、点在しているが10軒ほど飲食があるみたい)。

本庄では「まちあい館」という空き店舗を利用した物販もある集会所みたいなところで古本を売っていた。記念に一冊買い、店番をしているご老人(80近いか)に「暴力の街」についてあれこれ聞く。1957年の作だが、「私もまだ子どもだったので」とおっしゃる。しかし、映画は当然見ている。

明治時代の煉瓦造りの銀行を保存公開している「本庄レンガ倉庫」の受付の男性(70ぐらいか)にも「暴力の街」について聞いたが、こちらは知らないようだった。「暴力の街」「暴力の街」と口に出す変な男に戸惑っておられるようだった。ほんと、何か、因縁をつけているみたいだものな。いろんな町で口を開くたび、怪しい印象を残していく私だった。木造の旧本庄警察署以外は映画の手がかりなし。市の図書館へ行けばよかった。

浦和の広場で古本市が開かれていて、覗く気でいたが、疲れて帰還。ローレンス・ブロック『償いの報酬』を車中で読む。