浅川マキの日、新宿「ちょっと長い関係のブルース」

12月26日、グリーンのコートを着てまずは西荻へ。盛林堂で先日の買取りの精算金を受け取る。終盤、長く触ってなかった棚を一挙放出したのに値がついたみたいで、思ったより金額が多かった。ありがたい。高円寺へ移動。今年最後の即売会となる西部へ。2冊買う。三省堂新書、むのたけじ・岡村昭彦『1968年』は、浅川マキの1968年新宿をテーマに「本の雑誌」で書いているので、この年が気になる。700円を150円に書き直した値段票。帰ろうと土間へ下りたところで、「新潮文庫」の常連参加者Kさんとばったり。おやおや。そうか、住まいが近いんですね。

そこから年の瀬の新宿へ。新宿文化で「ちょっと長い関係のブルース」と題された浅川マキ没後10年のトーク・ライブを。渋谷毅のソロピアノ、関係者のトークを挟んで、金子マリが浅川マキを歌う(渋谷さんのピアノ)2時間。ゴールデン街に脱サラして2003年にオープンした、浅川マキの曲しかかけないバー「裏窓」の店主も登壇。この店に、浅川マキの使っていたピアノがあり、ライブも開かれるとのこと(渋谷さんは何度かここで小さなライブを)。この日は、チケットを取ってくれた東松山のIくんと一緒で、帰り「王将」を経て、新宿5丁目の「ふらて」というバーへ連れていってもらう。ここが超満員だった。長いカウンターの奥、角を曲がった席に座ると、ママが「そこは坪内(祐三)さんが座っていた席」という。ぼくのことを知っていて下さった。「ささま書店が閉じて残念、どれほどあそこで本を買ったか」とおっしゃるので「そのあと、別の古本屋が」と継ぐと「古書ワルツでしょう」とやたらにくわしい。このママさん、浅川マキのマネージャーをしていたというので話を聞きにきたが、この夜は次々と客が訪れ応対に忙しく、ダメだった。また出直そう。いい一日だった。帰り、丸ノ内線、中央線とずっと座れてまどろむ。

というわけで、浅川マキの一日。『ブライヅヘッドふたたび』は、あとちょっとで読み終える。これは今年一年のなかでもいい読書だった。いっぱいラインを引き、付箋も張った。そうそう、「ふらて」と店名を聞いて思い出したのは佐藤春夫「田園の憂鬱」で、主人公が飼っている犬の名が「フラテ」であった。あの店の名の由来がそうかどうかわからないけれども。