底抜けの50円均一が楽しかった

本の雑誌」連載、次号から新たに「田中小実昌」編に突入、第一回目を書いて送付。コミさんとバスの東京、というのがテーマ。毎回、コミさんが乗った路線バスに乗るつもり。第一回は練馬車庫から新宿西口まで関東興行バス「白61」に乗った。浅川マキのときは情報を濃縮して押し込んだが、小実昌編は、もう少しゆったりやりたい。

今週は毎日、2本ずつぐらい締め切りがある、集中の週。「潮」「北海道新聞」からも書評依頼があったので。がんばります。

ベイスターズ阪神戦3タテ。ばんざーい! しかし、まだ戦力が揃わぬチームだから気の毒だ。中野拓夢がレギュラーで先発し、大活躍。溌溂としていて、見るのが楽しい。

西部古書会館「均一祭」最終日(200円、100円と落ちていって)50円に行く。昼前に着いたら、もう大量に戦利品をカゴに入れている人多数。そうか最終日こそ、開始時間から行くべきなのか。それでも12冊ぐらい買ったか。600円。昼飯代の方が高い。通路の向こうでおじさんが「50円になったら違うよなあ、50円なら買える。50円」と「50円」を10回ぐらい連打していた。そばに寄って抱きしめて「もう、わかったから、ね。そうだね、本当だね」と言ってあげたくなった。

30歳ぐらいか、ぼくからした若者の男性が、カゴに庄野潤三を2冊、ほか秋山駿、辻邦生などを入れていた。「そうか、そうか、がんばっているなあ。いいラインだよ」と声をかけそうになる。ちょっと危ないなあ。持っている気もしたが、真鍋博装幀の「現代日本詩集」の『蒼白な紀行 村野四郎』を買い、帰りに電車で読む。あんまりいいのでびっくりする。「秋」はこんな詩。

「墓地うらの詩人は/街で熱く酔つ払つてきては/よく ここを通り抜けた/そのたび 彼は/野ぎくの花などを踏んづけては/永遠の思いにひたりたいとねがつたが/そんな濃艶な秋は もう/このへんになかつた//そこらに見知しらぬ女がいて/迫力のない絵を描いていた」

「そのたび彼は/野ぎくの花などを踏んづけては」というところがいいんだなあ。不可避的にそうなったのだとしても、「花などを踏んづけて」というところに気持ちが入っている。よく分る。

だいたいこのシリーズの詩集はみんないいんだ。軽さも薄さも大きさも簡易フランス装もいい。なんだ、べた褒めじゃないか。

6月刊、ぼくが編と解説を担当するちくま文庫野呂邦暢『愛についてのデッサン +短編』(仮題)が担当編集者によりツィッターで公になり、久しぶりに興奮しております。野呂にちゃんと値段をつけて、固めて置いてある古本屋はいい店の基準になる。京都「善行堂」にはありますよ。