本で床をぶちぬいた男「探偵ナイトスクープ!」に登場。

探偵ナイトスクープ!」再放送にて、本で2階の床をぶちぬいた男が登場。某氏52歳独身男性は、古い二階建て家屋(賃貸)に住む。マンガ、アニメ、写真集の収集家で、2階はコレクションで埋まっていた。ある夜、帰宅して家に入って、2階の一室がそっくり畳と床が抜け落ち、コレクションが積み重なっている状態を見る。もし、そこに寝ていたら死んでいたかもしれない。どうすればいいか、この先の生き方も含め相談したいと依頼、カンニング竹山が担当した。

我々の回りには、床をぶちぬかないにしても、過剰なコレクションを生活より優先させている人は大勢いるので、まあ、そんなには驚かない。驚いたのは、某氏の場合「保存」マニアで、購入した時の未開封のまま、中は開けず、本体も読まないということだ。今はあんまり人を入れないが、取材や各種作業などでわが書庫へ人が入ったとき、一様に「これ、みんな読んだんですか」と聞く。読めるわけがないので、それはスルーしてきたが、それでも本棚に並べるなり、床に積むなり本体に触れ、必ず中を開けることはする。みなそうだろう。フィギュアコレクションなどでも、梱包されたまま可視化されずに密閉保存する人は少ないのではないか。やっぱり、並べて、見て、満悦するのがコレクションのだいご味だろう。

彼はまったく違う。そこが、なんというか、あえて言わせてもらえれば常軌を逸している。「読まないの」と聞くと、ググって中身を見ればいいと言うのだ。本の購入に費やすお金は月に5~10万で、建設関係の仕事につくというが、高い給金をもらっておらず、食事は1日一食に切り詰めている。書店で1万円以上買うと入れてくれるバッグがあり、そのバッグのまま、山のように本は積み重なって、まったく可視化されない。そこが新しい。竹山は思わず「バカじゃないの?」とこぼしたが、圧倒的にそう思うだろう。本に縁なき衆生には、まったく意味不明の趣味である。

けっきょく、どうしてもというものだけ残して、コレクションは処分されることに。その前に、自分で50箱だけ古本屋(「みのたけ書店」大阪)に売って、まだ額を聞いていないというので、あらためて「みのたけ書店」を呼ぶと、業者市へ出して70数万円になったというのだ。札束に驚く竹山と某氏。これが単に、読み捨てた漫画の箱なら、その10分の1にもならないかもしれない。「未開封、新品」というのが魅力だ、と「みのたけ書店」さんは言う。この30年の購入費用は推定3000万。4トントラック一杯に今回処分して、おそらく300~500万円にはなるだろう。500万円で売れたとして、中はまったく読んでいないから、購入費用3000万円との差額は2500万円。これが30年間の「保存」愛の消費額だ。なかなか趣味に、月10万円つかえる人は独身貴族(あるいは高額所得者)以外に考えられない。悩ましい煩悩の世界である。

もう一つ驚いたのは家主にも取材しているのだが、床をぶち抜かれて(修理にうん百万かかる)、補償を求めるわけでもなく追い出すわけでもなく、そのままでいいなら住んでください、と苦笑いで平然としている。世の中、どうなっているのだろう。いろいろ考えさせられてしまった。

けっきょく、当人にとって、何がいちばん幸せかという哲学的問題は、当人にしかわからない。他人がとやかく言うことではない、というのが番組を見ての結論だ。某氏と私は「本をためすぎ」男としては同じエリアの住人である。しかし、会って話がしたいかと言えば、それはちょっとかんべんしてくれ。