谷口ジローと清瀬

2月3日曇り、寒い。清瀬の博物館で開催中の「谷口ジロー清瀬」展を見にいく。西武沿線在住の金澤『フォークソングの東京』信幸さんをお誘いする。まずは一人で清瀬「みゆき食堂」で昼食。もともと人気店だったが、「孤独のグルメ」登場以後、観光地化してつねに満席だ。とんかつ定食を注文。けっこう時間がかかったが、壁一面を埋め尽くす星の数ほどあるメニューを見ているだけで飽きない。黄色い色の新しい札は値上げしたものらしい。それでも安い。揚げ出し豆腐だけ注文した若い女性がいたが、これが250円だったか。客の9割は昼間から飲酒モード。酒を注文しないと変、なぐらい。うなぎの皿をつつきながら酒を飲む老人、歯が悪いのだろうか。

厨房に何人いるか分からないが、注文を聞き、客を誘導し、注文の品を運ぶ髪を後ろでくくった女性が、きびきびと動き、つねに客の動向を把握し、声をかけ完璧な接客。レジでお金を払うとき(サービスタイムで660円)、「ご協力いただき、すいません」と言われる。そうか相席したことか。ちょっと感動した。いや完璧ですよ。何か賞を上げたいほどだ。すぐにでもまた行きたくなる名店。超人気店となり、いまは2時間リミット。いや十分ですよ。

清瀬駅で金澤さんと合流、けやき通りを少し歩き(彫刻がずっと展示されている)博物館の展示を見て、久しぶりに『歩く人』にも登場する中里富士塚へ。博物館から近いのだから、展示でそのことを知らない人に示してほしかった。「つげ義春と調布」展はそれをして親切だった。12年ぶりぐらいに中里富士に上り、そのまま柳瀬川へ。浚渫護岸工事中。これも『歩く人』で描かれた大きな池のある金山公園へ。作品のページと同じアングルから池を見る。けっこう感動する。谷口ジローの漫画の登場人物になったような気分。金澤さんをこんな酔狂につきあわせて悪かった。しかし、ぼくは大満足。谷口ジローについて原稿依頼があり、この体験をベースとしたい。

下田バス停から清瀬駅北口行きのバスに乗る。停留所の時刻表を見ると、2分すぎていたが、いや時間通り来ることはないのだから、と1分ほど待つとバスが現れた。駅前ドトールと金澤さんと出版業界について(金澤さん、編集者として「ビックリハウス」編集部にいた)話す。山あり谷ありの人生。武士は相見互いである。