わが故郷枚方が39・8℃。

わが書斎兼書庫は地下にあり。ほぼ一日中をここで過ごし、ここで眠る。セーヌ河畔に浮かぶ船舶住宅のように、独立し社会から引き離されている。地下のおかげで、室温が28℃以上にあがることはなく、冷房知らずで夏を過ごしたこともあるが、今年はダメだった。ついに数日前から冷房(除湿)を入れる。

種村季弘さんが『徘徊老人の夏』(繰り返し読む)で「九四年夏は記録的な猛暑だった。(中略)三伏とは、五行思想で夏の火の気に押されて秋の金気が伏蔵することをいうらしい」。しかし「真夏日続きで、伏蔵している秋の金気はなかなか立ち上がる気配がない」、「夏中、突然百歳になってしまったような体力の低下を経験した」と書いている。このとき、種村さん61歳。まさしく今年の夏のぼくはそうだ。

わが故郷、大阪府枚方市が先日ニュースとなり、何かと思えば「39・8℃」を記録し、日本でいちばん暑かったという。内陸ではあるが盆地でもなく、そんなに暑い街ではなかったはず。高原の古民家の畳の部屋に寝転んで蝉の声を聴きながらスイカを食べたい。昼はソーメン、夜は焼魚とおしんこ、みそ汁でご飯。朝は散歩をしようか。

ほとんど外出することもなく、水風呂に浸かり、アイスコーヒーを飲み、音楽聞きながら本を読んでいる。日盛りの屋外で働いている方々には申し訳ない。そのかわり収入は少ない。支出も少ない。よく聴くのは今井信子ヴィオラのバッハ。低音の静かな夏の音楽。ベッドのタオルケットと薄い敷布を4枚、2度に分けて洗濯する。表の自動車のボンネットに広げて干したら30分で乾いた。

今朝、部屋が異様に臭いと思ったら、パンツにウンコがべったり。一瞬、ボケてウンコをもらしたかと恐怖したが、猫がいつのまにか椅子にウンコをしていって、そこに座ったらしい。すぐ脱いでシャワーを浴びて水風呂。

「ふくらむ読書」7と8を送付。余裕をもって書けばいいのだが、いつも締め切りまぎわに2本書く。これがきつい。池内紀宇野浩二「蔵の中」と質屋について。