鉄、鉄、鉄でしばしも休まず槌打つぼくなのさ

梅雨空のせいか。全体に低調、というか昨年からのコロナ自粛により、ずっと低調なのだが。「サンデー」レギュラーページ、夕方に送付。昨日、地下の書斎への階段で、電灯をつけずに降りて、途中、方向感覚を失い、宙に放り出され床に叩きつけられる。腰をうつ。コップに氷とコーヒーを入れていたのが、手から離れてどこかへ飛んだ。すぐ処置しないと、コーヒーと溶けた氷でまわりの本が台無しになると思いながら、しばし茫然とソファに寝転がる。もう、どうでもいいやという。

じつは今年、何度か、真っ暗の階段で方向感覚を失うことがあった。この家に住んで20年、一日10回以上は上り下りして体が覚えていると思っていたが、それで平気だったが、覚えていなかった。というより明確な「老い」であろう。今でも腰は痛む。

梅崎春生『ボロ家の春秋』中公文庫は、直木賞候補作に随筆を加えたオリジナル編集で、『怠惰の美徳』をすでに同文庫で編者となった荻原魚雷くんが解説を書いている。これが周到かつ細心な注意をはらったみごとな解説となっている。末尾の2行も効いている。魚雷くんが不動の確固たるポジションを得て、晴れ晴れしい仕事をしていて感心する。

ダーリンハニー吉川の「鉄道ひとり旅」は、ディレクターがハンディカメラを持ち、タレントは吉川一人という二人編成の低予算鉄道番組だが、ついつい見入ってしまう。録画した「播但線」の回は過去の再放送。姫路から和田山へ。途中、電化から非電化に変わる路線。和田山福知山線とも接続していて、その先、城崎温泉へつながる兵庫県縦断の路線。同じ姫路始発の「姫新線」は竜野へ行く時乗ったが、こちらは未踏。だから面白い。ガンガン、体へ入ってくる。「福崎」「鶴居」「寺前」「生野」「竹田」で途中下車。いずれも黒い瓦屋根の木造駅舎がすばらしい。「寺前」は、映画「ノルウェイの森」のロケ地となっているというが、どのシーンだろうか。そうか、芒の原「峰山高原」がそうなんですね。

「鶴居」では、ここが生野銀山から銀を輸送する通過点であり、「銀の馬車道」と名付けられ観光の目玉となっていると知る。吉川はスルーしたが、私はこの観光案内板でちらりと、「脚本家・橋本忍」の生家、があるとチェック。へえ、そうなのか。銀の鉱山があった「生野」は、かつての繁栄が力なくしおれた、いい感じの街並みが残る。途中下車するなら「生野」か。日本のマチュピチュ竹田城のある「竹田」は、冬季は閉鎖されているが、霧のなかに浮かぶ山城に観光客が押し寄せるようでパスしたい。

姫路から和田山まで約2時間。京都から福知山線和田山までは約3時間。今度、青春18の期間に京都へ行くことあれば、播但線に乗りたい。鉄道ファンの方へ、ここまでの記述で、どこか間違っていたらごめんなさい。

つげ義春を漫画、文章ともに読み返していて、「猫町紀行」の舞台となった山梨県上野原「犬目宿」へ行きたくなる。上野原から一日一本か二本のバスで行くしかない。旧甲州街道は、標高500メートル級の巻き道が続く。つげ義春が訪れた半世紀前とは変貌しているが、火の見やぐらなど、宿場の名残りがある。

フジテレビtwoで再放送している「みんなの鉄道」は、おそるべき前衛的な鉄道番組で、また機会があったら紹介したい。