東映「どろ犬」はいいぞお。

今週と来週あたま、連日締め切りあり。ありがたいことだ。本日は「學燈」連載を送付。これもあと1,2回で終わる。

日本映画専門チャンネルで録画した、東映の1964年公開「どろ犬」を見る。監督の佐伯孚治(たかはる)も、作品名もノーチェック。見て、あんまりいいので驚いた。無駄のないショットの積み重ね、光と影の使い方のうまさ。「野良犬」を100点の基準として78点はあげられるかと思う。自分がムショにぶちこんだヤクザの情婦を、アパートに住まわせる直情のやり手刑事が大木実。抱くと折れそうな、花のような情婦を原千佐子。原千佐子ってこんなによかったっけ。「黒い画集 あるサラリーマンの証言」でも小林桂樹の愛人役だった。

大木の裏を知り、情報の横流しをさせる超人的ワルのやくざが西村晃。ガスタンクの下の公園で大木を待つのに、ブランコをこぐシーンがいい。大木と原が珍しく外で映画を見るのだが、これが東映漫画映画「わんぱく王子の大蛇退治」。刑事と情婦が見る映画ではないが宣伝ということで。刑事が西村を追い町を歩くシーン。「キリン堂書店」の文字が。あれ、経堂にあった古本屋ではないか。それとも別の場所でも営業していたか。最後の夜行列車での逃避行。追い詰められて……というラストまでダレがない。ほめすぎか。頭の弱いちんぴらに田中邦衛。監督の佐伯はこれがデビューであったが労働争議に参加したため子会社へ追いやられテレビドラマを撮ることに。もったいないことをした。