120冊にサイン、イラスト、落款入れ!

少し冬の気配を感じる秋の日。あいかわらず、新潮文庫の『西脇順三郎詩集』を拾い読み、秋には西脇が似合うと思う。西脇の詩には、ひんぱんに植物の名が出てくる。とくに花に疎い私は、それがどんな花なのかわからない。で、出てくるたび、ネット画像で検索して、下部の空きページに、当該の花の絵を描き、色鉛筆で着色する。これがやめられなくなって、とうとう一冊分を埋める。

ヒメノトラオ、タマリンド、フジバカマ、ムクゲ、サンザシ、リンドウ、アカマンマ等々。ちょっとした絵本になる。私の死後、これに古書価がつくだろうか。

で、絵の話だが、年に2回ほど、jpicが『読書の腕前』を大量注文してくれ、それにサイン、イラスト、落款を入れる作業をしている。また120冊、注文してくれたようで、27日、jpicの事務所に赴き、120冊、サイン、特別に今回用意した動物のイラスト50点、「志」の落款を入れる。在庫だから、印税は入らないが、各地イベントで売ってもらえるので、布教活動だと思ってやる。しかし、昼食時間を含め、2時間弱で連続120冊やると、もう途中から頭が真っ白になる。すさまじい集中力で目から星が飛ぶ。しかし、用意した絵を、素早く真似て描いていくと、途中から、元の絵から離れて、自由な線でおそるべき短時間で描けるようになる。そうすると、線がだんだん洗練されて、ぐっと後の方ができがよくなる。おもしろいものだなあ、と思う。

もうこの5年でjpicだけで1000冊ぐらいサイン本を売ってくれているはずで、そろそろ再版がかからないかと思う。今回、いくつか奥付をチェックして、2015年に7刷りまで重版されたことを確認。倉庫の在庫も切れる頃かと。しかし、この出版不況のなか、重版を渋るのもよく分るのだ。

都心に出たら、仕事を固めるので、このあと小走りで九段下へ。T書房編集者と、うれしい打ち合わせ。また首がつながった。また小走りで、サンデー毎日編集部へ。3週分の本選びをする。よく働いた10月27日であった。手帖を見て、29日が、今の家に引っ越して19年目突入だと知る。誰もほめてはくれないけど、がんばったなあと一人祝杯をあげる。ヘニング・マンケル『目くらましの道』再読中。「何といっても子どもは、やっぱり人生には意味があるかもしれないと思わせてくれる」など、ストーリーと関係ない、何気ない数行に感じ入る。これはやっぱり名作です。読む本ない、とぼやいている人におすすめ。