保谷「bunca」にふられて、三鷹まで西尾勝彦『フタを開ける』を読む。

空気が乾燥しているせいか、喉が渇く。がぶがぶと水、お茶、牛乳などを飲む。このところ、思い屈すること多く、つい電車、バスを使って日常を逃げ出すことを考える。

昨日は西荻「盛林堂」へ補充と精算。小野くんは不在。ミステリと谷崎の文庫を2冊買う。そのまま駅前から大泉学園行きバスで終点までバスに揺られる。バスに乗るのが楽しくて仕方がない。どうしちゃったんだろう。30分かけて終点まで。隣の保谷駅まで歩く。保谷のジャズ喫茶「bunca」で久しぶりにジャズをと考えたが、店の前に着いたら「臨時休業」の張り紙が。

駅反対側「アカシア」100円均一棚から、末永照和美術論集『かくも長き痙攣の時』と、詩が読みたくなって、西尾勝彦『フタを開ける』を買う。西尾さんの名に「おっ!」と思ったのは、尾形亀之助『カステーラのような明るい夜』七月堂の編者だからだ。「北海道新聞」に同著書評を書いたのが、私の今年初の掲載原稿となる。

保谷から三鷹までバスの車中(約30分)で『フタを開ける』を読んだが、心優しく平明な世界が身に染みる。非常に気に入った。詩はこれでいいんじゃないかと思えたのである。西尾さんは1972年京都生まれで同志社大学卒。表題作「フタを開ける」で、学生時代、左京区北白川の戦前に建った木造アパートに下宿していたことが書かれている。「コ」の字をした建物で、古い井戸のある中庭を囲む。バイトは「スーパーマイケル」。輸入食材を扱う高級店である。銭湯は「白川温泉」。「白川温泉」は「白川湯」だろうか。アパートもスーパーも銭湯も今はない(と思う)。

「人」は大学時代、人づきあいをせず、唯一知り合った友人が、いまは精神科病棟に入院していて、そこを訪ねるという内容。「コロッケ」のユーモアと哀愁もいい。

いま少し古い京都地図を見たら、「マイケル」は白川通沿い、上終町京都造形大学前あたりにあった。私はもう少し南、同じ左京区銀閣寺道で下宿。「文庫堂」があったので、「マイケル」あたりは知っているが、「マイケル」へは入ったことがない。近くの「王将」ではよく食べた。

帰宅後、「サンデー」の原稿。