立川シネマシティで「異人たち」を

20日夕、一人で食べることになり、散歩堂さんを誘うと、立川シネマシティで「異人たち」を見ることを提案される。山田太一原作『異人たちの夏』は大林宣彦監督で映画化されたが、それをイギリスへ移す。大きな改変は脚本家の主人公アランをゲイ(クィル)に設定したことだろう。実体のある幽霊である両親にそのことを告白し、いじめられていた過去についてのわだかまりが、原作とは違う揺れ、異相を生み出す。両親との関係がより複雑になった、といっていいか。実家も庭付き二階家の一戸建てで、自分の子供部屋がそのまま残されている。

アダムに扮したアンドリュー・スコットは、最初見たことがあるなあ、と思い、テレビドラマ『シャーロック』のモリアーティではないかと気づく。同じマンション(住人は2人だけ)のハリーと結ばれるが、じつは幽霊というのは原作通り。ただし大林版のようなホラー、怪談の要素は薄い。きわめて自然に現実との融合がなされる。逆に察しの悪い観客は混乱させるかもしれない。これは原作、大林版を知った上で見たほうがいいと感じた。ミルフィーユのように重なって感興が増すのだ。

立川シネマシティで見たのだが、券売機で券を買うとき、シニア割引がなく2000円でチケットを買ったが、有人窓口に会員(シニアは半年100円)になると、一回1000円で見られると知り、散歩堂さんに「チケット買ってしまったけど、今から会員になって」と交渉してもらい「本当は払い戻しはしないのですが」と言われたがぶじ成立。会員費100円を払って1000円で見られた。えらい違い。立川シネマシティは自転車で20~30分だから、これで新作を見る楽しみができた。「異人たち」は客席がらがらであった。

石坂浩二音無美紀子が若く貧しい、紙芝居に夢を賭ける夫婦を演じる「二人だけの道」最終回を見る。電気を止められる生活に、石坂が紙芝居を止め業界誌記者に就職するが、音無はそれをなじり実家へ戻り別居状態に。しかし……。風雲吹き荒れるエキセントリックな設定が多い今のドラマに比べたら、ほとんど静物画の味わい。石坂が描いた紙芝居の絵を、破ってしまうシーンあり。「ああっ」と声が出る。石坂の原画だもの。値打ちあるよ。今ならカラーコピーを取ったダミーを破るところ。

赤旗」の「試写室」の仕事で、キムタク主演『ビリーブ』をいち早く見る。

「朝日」に紹介記事が出た千葉市美術館の「早世の画家夫妻 板倉鼎・須美子」展を見たいと思う。これを見逃せば、ほとんど見ることはないだろう。