枚方「まんぷく」へ行きたい

先週から歯科医院に通っている。長く放置していたガタガタ(元からの自分の歯は半分くらいか)の歯の一本が痛み、重い腰を上げたが、それまで通っていた医院に不信を持ち、別の医院へ。ここが何というか、当たりで、素早く正確。行ったその日に麻酔をかけられ、ぐらついている歯根を抜かれた。次の処置も始まり、予約がどんどん入っていく。前の医院が各停としたら特急。

ヒマだからユーチューブで、「立ち食いソバ」「食堂」「鉄道」ものをあれこれ検索。映像に目をひく赤い幌に「めし」と大書、下に小さく「うどん」とある大衆食堂が紹介されていた。そば300円、とんかつ定食590円、納豆定食にいたっては290円と安い。店名も分らず、枚方の国道沿いという情報から「まんぷく」という店だと分かる。中宮精神医療センターの近く。いや、もっと言えば「中宮中学」の近くだ。ぼくはここの第一回卒業生(四中~三中~宮中と渡り歩いた枚方転校生)。へえ、こんなところに。行ってみたくなった。母校も見たい。

近鉄針中野」のうどん・そば「あめや」もいいなあ。きつねうどんがうまそう。かやくごはんと漬物が付いたきつねうどん定食あり(490円)。先日、逝去が報道された笑福亭仁鶴に、子どものころ、よく遊んだ話をまくらにあって、地面に叩きつけて破裂させる火薬があり、まちがって人の家に飛び込んで、ご飯を食べていた娘のご飯の上にのり、それを食べて破裂。「ああ、かやくご飯か」というギャグがあるのを思い出す。

青梅の会館に仁鶴が独演会でやってきて、たぶん東京にファンはいないだろう、応援しに行ってやろうと出かけたら超満員だったことがあった。「生活笑百科」でよく知られ大人気なのであった。

都バスで小滝橋車庫。上落合「アンドロワ」。

23日午前中に春陽堂「オカタケな日々」61と62を送付。写真も。この2回まとめて、というのは編集部の都合だが、けっこうきつい。つべこべ言わずやれよ、ってことだが。

少し早めに家を出て、「サンデー」本選びに向かう。九段下。ちょうど昼時だが、九段下周辺、意外に食べるところ少なく、小諸そばなど行列ができている。もう5年ぶりぐらいか、「さくら水産」で日替わり500円。ごはんお替り無料だが、みんなお替り(みそ汁も)する。ぼくは自重。

いつもより早く「サンデー」本えらびを終え、同じフロアで編集作業をしている北條くんがいて、少し話す。「ネギシアター、またしたいね」などと。それでもまだ1時過ぎとかで、前から思っていた、九段下から小滝橋車庫行きのバスに乗る。飯田橋江戸川橋、早稲田、高田馬場と巡り、バス車庫のある小滝橋へ。35分のバス旅。小滝橋神田川に架かる橋。鉄道駅はどこからも離れていて、けっこう利用者あり。

東西線「落合」まで歩く。途中、上落合1交差点角に洋菓子・和菓子「アンドロワ」という、古い古い店舗を発見。なぜか壁際に大量の中古レコードが並んでいる。店内薄暗く、なんとも不思議な光景だ。店に人はいない。ガラスケースに、見本のように洋菓子が並んでいる。今思えば、なんでもいいから買って、店に入るべきだった。「古書ワルツ」へ寄る。二の腕にタトゥーを入れた女性店員がレジで作業をしている。

本で床をぶちぬいた男「探偵ナイトスクープ!」に登場。

探偵ナイトスクープ!」再放送にて、本で2階の床をぶちぬいた男が登場。某氏52歳独身男性は、古い二階建て家屋(賃貸)に住む。マンガ、アニメ、写真集の収集家で、2階はコレクションで埋まっていた。ある夜、帰宅して家に入って、2階の一室がそっくり畳と床が抜け落ち、コレクションが積み重なっている状態を見る。もし、そこに寝ていたら死んでいたかもしれない。どうすればいいか、この先の生き方も含め相談したいと依頼、カンニング竹山が担当した。

我々の回りには、床をぶちぬかないにしても、過剰なコレクションを生活より優先させている人は大勢いるので、まあ、そんなには驚かない。驚いたのは、某氏の場合「保存」マニアで、購入した時の未開封のまま、中は開けず、本体も読まないということだ。今はあんまり人を入れないが、取材や各種作業などでわが書庫へ人が入ったとき、一様に「これ、みんな読んだんですか」と聞く。読めるわけがないので、それはスルーしてきたが、それでも本棚に並べるなり、床に積むなり本体に触れ、必ず中を開けることはする。みなそうだろう。フィギュアコレクションなどでも、梱包されたまま可視化されずに密閉保存する人は少ないのではないか。やっぱり、並べて、見て、満悦するのがコレクションのだいご味だろう。

彼はまったく違う。そこが、なんというか、あえて言わせてもらえれば常軌を逸している。「読まないの」と聞くと、ググって中身を見ればいいと言うのだ。本の購入に費やすお金は月に5~10万で、建設関係の仕事につくというが、高い給金をもらっておらず、食事は1日一食に切り詰めている。書店で1万円以上買うと入れてくれるバッグがあり、そのバッグのまま、山のように本は積み重なって、まったく可視化されない。そこが新しい。竹山は思わず「バカじゃないの?」とこぼしたが、圧倒的にそう思うだろう。本に縁なき衆生には、まったく意味不明の趣味である。

けっきょく、どうしてもというものだけ残して、コレクションは処分されることに。その前に、自分で50箱だけ古本屋(「みのたけ書店」大阪)に売って、まだ額を聞いていないというので、あらためて「みのたけ書店」を呼ぶと、業者市へ出して70数万円になったというのだ。札束に驚く竹山と某氏。これが単に、読み捨てた漫画の箱なら、その10分の1にもならないかもしれない。「未開封、新品」というのが魅力だ、と「みのたけ書店」さんは言う。この30年の購入費用は推定3000万。4トントラック一杯に今回処分して、おそらく300~500万円にはなるだろう。500万円で売れたとして、中はまったく読んでいないから、購入費用3000万円との差額は2500万円。これが30年間の「保存」愛の消費額だ。なかなか趣味に、月10万円つかえる人は独身貴族(あるいは高額所得者)以外に考えられない。悩ましい煩悩の世界である。

もう一つ驚いたのは家主にも取材しているのだが、床をぶち抜かれて(修理にうん百万かかる)、補償を求めるわけでもなく追い出すわけでもなく、そのままでいいなら住んでください、と苦笑いで平然としている。世の中、どうなっているのだろう。いろいろ考えさせられてしまった。

けっきょく、当人にとって、何がいちばん幸せかという哲学的問題は、当人にしかわからない。他人がとやかく言うことではない、というのが番組を見ての結論だ。某氏と私は「本をためすぎ」男としては同じエリアの住人である。しかし、会って話がしたいかと言えば、それはちょっとかんべんしてくれ。

段ボールの御棺に

何日か前から、夜に入ってリーリーと虫の声がするようになった。最初、耳鳴りかとも思ったが間違いない。暦の上では「秋」である。

オフコース「秋の気配」を、はい、ここで流してください。「あれがあなたの好きな場所~」、はい、ありがとうございました。

しばらく行方不明だった2001『全国古本屋地図』(日本古書通信社)がひょっこり出てくる。これを最後に、地図つき古本屋ガイドは出なくなった。自分で書き込み、継ぎ足し継ぎ足しした天下一品の本である。八王子「むしくい堂」の書き込みがないので、ずいぶん長く、埋もれていたことになる。ぼくが死んだら御棺に入れてもらおう。できれば段ボールの御棺がいい。

カナカナとひぐらしの鳴く頃に

午後、ようやく曇り空に変わり、蝉の音す。これが「カナカナ」とひぐらしのなくようになれば、夏の終わりとなり、切ない気持ちになる。たぶん、夏休みが終わり、ああ学校かあ、という気持ちが体の中に残っているのだろう。

昨日「古通」長岡「雑本堂」さんの原稿、「スコーレ」の連載(あと残り一回で終了)を書いて送る。今日は午前中に「四月と十月」の「彫刻」、新潟駅の「忠犬タマ公」について書く。月半ばはこうして締め切りが集中する。売れっ子の書き手と比べれば、小雨のようだが。

念のため、ユーチューブで検索したら2004年のNHK「獏さんを知っていますか?」90分全編が視聴可能と知る。あわてて視聴し、細かにメモを取る。よかった、見られて。「本の雑誌」連載は、この山之口獏編で終了(あと5回)。担当さんTさんと、今後のこと、電話で打ち合わせ。耕治人編を書下ろし追加して、書籍化される予定。連載は、毎月初めて読む人を意識して書いていたので、大幅に手を入れる必要が出てきそう。まあ、来年の話だが。65歳になっている。獏さんは59が享年。小津安二郎と生年と没年が同じ、と知る。そのことに感動する。いい組み合わせだ。涼しくなったら墓(千葉の八柱霊園)も詣でたい。獏さんのことが好きだった詩人、辻征夫もまた同じ霊場に眠ると知る。これもいい組み合わせ。土門拳田久保英夫もここだ。よおし、行くぞ。しかし、遠いな。

秋の10冊と「無言館」と山之口獏

外へでてくてうずうずしてくるが、また雨か。下鴨納涼古本まつりは雨が上がり、本日開催とのこと。よかった、よかった。少しは涼しいか。

毎年、読書の秋にあわせて、古巣(かつて長期連載)「ビッグイシュー」から、10冊本をセレクトして本の紹介原稿を書いている。今年も依頼があった。テーマは「時、時間の過ごし方」。コロナ禍のステイホームが前提。さっそく、思いつくままリストを作っておいた、そのリストメモが見当たらない。2,3冊は思い出したが、そのほか、なんだったか。こんなことばかりしている。村上春樹「午後の最後の芝生」(『中国行のスローボート』)は入れようと思っている。

新・日美再放送で「無言館」を見る。また行きたくなってきた。「無言館」から持ち込まれる絵の修復アトリエも紹介。気の遠くなるような作業。じゅうぶん手を尽くし、しかし余計な手は加えない。その匙加減にうなる。

山之口獏を読んでいる。やっぱりいい。獏さんに会いたければ池袋の泡盛酒場「おもろ」へ行け、と知るが、検索したら3年前ぐらいに閉店していた。獏さんの時代、大正期、沖縄から鹿児島まで船でどれぐらいかかったか、知りたかったが。やっぱり全集を買わないとダメか。