「古書通信」11月号は「ゆうらん古書店」

「古書通信」11月号がとどく。経堂にできた「ゆうらん古書店」について書く。次号は吉祥寺「一日」その他を書いて送付。その次はまだ決まっていない。江古田の「スノードロップス」はどうか。江古田も長いこと行ってない。教育誌コラム、「オカタケな日々」93と94も送付。圧縮して仕事をこなし、本日、「本の雑誌」2023年1月号からの新連載に取り組む。じつは締め切りは先週だったそうだが、担当の前田くんに告げられオドロキ、少し伸ばしてもらった。2400字ということは6枚か。新しく書く原稿は体になじむまで、緊張する。中身は来年、こうご期待!

地球に無酸素時代が長くあった。それはそうなんだろうけど、言われてみてちょっと驚く。ここからは聞き覚えで間違っていたらごめんなさい。各自、検索して確かめてください。地球が誕生したのが46億年前、海が生まれたのが44億年前、以後25億年前ぐらいまでは無酸素で生物は生きられなかった。そのころ、海中にバクテリアが発生し、酸素を作る。それでもエベレストの頂上程度の有酸素時代が続く。酸素濃度が22~26パーセントになったのはようやく1億年前。くれぐれも引用しないでくださいね。知らないこと多く、人間の寿命の短さを思う。

立川「梅の湯」へ。

11にち、吉祥寺。武蔵野市立吉祥寺美術館で期限の迫った「片山健の油彩画展」を見る。土井「トムズボックス」章文さんのプロデュース。音羽館の広瀬くんから招待券をもらったままになっていたので、あわてて駆けつける。夏の緑が匂ってきそうな濃密な空間が描かれる。寝転んでいる人の絵が多いのはなぜか。太陽が作る影の世界も独特なタッチ。おもしろかった。あとでチラシを読むと、そうか65歳以上は無料(通常は入館料300円)だったのか。「古通」用に「一日」に初見参。バサラ、古書セン、よみた屋を覗いて帰る。ちくま文庫ゲラ返し。週明けにかけて、原稿締め切り多種あり。よって、珍しく勤しんでおります。

12日、風呂難民が続いていて、近隣(といっても5キロ圏内)の銭湯を順に巡っている。立川「梅の湯」が意外に近いことに気づく。自転車で20分くらいか。3時開店を目指す。すでにたくさん客が来ていて、人気の銭湯とわかる。1,2階に浴場が分かれていて、男性、女性別になっている。一階、二階ともに漫画が大量に置かれているのが特徴。休憩室も広い。しかし、あんまりこちらに響く作品はなさそうだ。40代、50代の人が読んでいたような作品か。たいていサウナは別料金でここもそう。300円とかで、そう考えると、サウナ込みの「テルメ小川」880円は高くない。ただ、毎日は行けない。

銭湯料金は1970年代ぐらいまでは、だいたいコーヒーの三分の一ぐらいの料金設定で、客が減ってどんどん値上がりしたのだ。いまの物価なら200円ぐらいで入れたことになる。銭湯料金がコーヒー代に追いついた。

今朝、町内会の清掃に出る。いつもは妻まかせのB級夫だが、この日は代打。10名ぐらいの参加で、道の落ち葉をかきあつめ袋に入れる。ものの20分ほどで汗をかき、腰が痛くなる。ポンコツの極みなり。気づいたら財布に札がなく、スーパーでの買い物を「paypay」で払う。何か、いけないことをしているような気になる昭和の男であった。

高円寺茶房にて

10日、高円寺茶房で「本の雑誌」前田くん、装幀デザインの真田(真治)くんと打ち合わせ。その前に木曜から四日連続の「西部」愛好会を覗く。文庫、新書判の小さい本ばかり4冊。かさばらなくていい。クロークの志賀くん(もと音羽館店員、独立してネット古書店経営)にあることで相談したくて連絡先を聞く。

打ち合わせ、真田君とは本当にひさしぶり。50歳になったという。雪岱研究の第一人者。即売会は神田を主戦場とし、高円寺へは来ないらしい。いつもニコニコとしている。感じよし。本題に入る前、もっぱらあふれんばかりの古本話。大阪芸術大学へ週一で非常勤として教えに行っているとのこと。毎週、大阪へ行けるのはいいなあ。

三益愛子の当たり狂言の映画化「がめつい奴」(千葉泰樹監督)を見る。どえらい面白さ。悪人しか出てこないピカレスク群衆コメディ。出てくる人物、全員が愛すべき悪人で、釜ヶ崎のドヤに巣くう。自動車事故、と聞くとすわ駆けつけ、たちまち事故車をスクラップに分解し、鉄くず屋の競売にかける。まあ悪人といっても生きる知恵としての悪事でありユーモラス。森雅之が汚れ役というのも珍しい(大阪弁は変)。お鹿ばあさんに育てられる精薄の孤児が舞台と同じ中山千夏で、天使の役目を果たす。高島忠夫が舞台に引き続き、はつらつとした役どころ。森繁久彌も「らしい」出演(舞台では榎本健一)。宿賃が一泊30円。昭和30年ぐらいの設定か、となると300円(では安すぎるか)。

はじめぼくはひとりだった

7日、テーマは「写真」で9000字(じっさいは8000字ぐらいしか書けなかった)の原稿をようやく脱稿して送付。「写真」について、改めて考えるチャンスとなった。古本で買った、個人の古いアルバムについて言及する。

今日8日は、先週に届いた『ここが私の東京』ゲラをチェック。校正の細かい指摘は担当のKくんにまかせる。それで、原稿そのものに集中することができた。一度、単行本になる時、加筆して、校正を経ているので、そんなにいじらないで済む。単行本化の増補のとき書いた書下ろしの、自分の上京物語を再読して恥ずかしくなる。こういう機会がなければ、思い切ってかけないことだった。

友部正人の章を読んでいて「はじめぼくはひとりだった」に言及していて、これを聴きたくなる。収録されたアルバム「どうして旅に出なかったんだ」は、本当によく聞き込んだものだった。名曲ぞろい。「生きていることは愛なんかよりずっと素敵なことだった」という詩行にしびれる。「上京」について、長いオリジナル曲を作りたくなる。東京(じつは埼玉)に出てきたばかりの時、「はじめぼくはひとりだった」のだ。

夜、近所の人たちが路上に出てきて、一緒に皆既月食を眺める。赤い月。

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国立「鶴の湯」へ

連日、人と会って興じる週後半となった。5日は散歩堂さんと六本木、サントリー美術館で「美をつくし 大阪市立美術館コレクション」を見る。併設された和菓子カフェでお茶と麩まんじゅうセット。女子気分。お茶がおいしい。B1の「無印」で韃靼そば茶を買う。

散歩堂さんも志賀直哉学派で私と同じ。ということで青山霊園まで歩き、ひさしぶりに志賀直哉墓へ。生垣で囲まれたなかに志賀家の墓が10基近く並ぶ。秋の墓地は枯葉が落ち、静かな楽園でもある。気分よく、そのまま信濃町駅まで歩く。外苑名物の銀杏並木はまだ半分黄色だったが、すでに大勢の観光客で埋め尽くされている。

西荻まで行き、盛林堂、音羽館へ。それぞれ買う。音羽館では黒澤明姿三四郎』DVDを。ちょうど小林信彦の黒澤の本を再読したばかりだった。お好み焼き屋「粉屋時次郎」でお好み焼きとビール。周囲のテーブル、2組とも鉄板焼きのみ食し、お好み焼きは食べない。大阪ではちょっと考えられぬことなり。焼くのが面倒、ということであろうか。大阪人のわれらは憤慨する。

今日は風呂難民が続く身を自転車に乗せ、国立「鶴の湯」へ。数年前リニューアルされたばかりのモダン銭湯。ぴかぴかで美しい。ここ最近巡った多摩地区の銭湯ではいちばん混んでいる。若い人も多し。高炭酸湯、シルキー湯など種類も豊富。これなら500円の価値あり。入れ墨の人あり。普通、「お断り」と張り紙があるので珍しい。別にいいんじゃないかと思う。帰り、すぐ近くの「ユマニテ」を覗くも、30年ぐらい本も値段も止まったままの棚で、いい本はたくさんあるが、買えなかった。もうしわけない。今日は「天下一」という国立のお祭りでものすごい人出。祭り嫌いのぼくは、避けて避けて家路につく。今週は少し落ち着こう。

炭火で焼いた和牛ローストビーフ

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昨日、ある依頼原稿と格闘。これまで書いたことのないテーマで9000字。途方に暮れるが、具体的なことを書いていくしかない。2000字書いたところでストップ。書き始めれば何とかなる。いずれ着地点も見えてくるはず。

夕暮れて小雨。ふたたび牧野邸酒宴のお呼びがかかる。牧野邸にレギュラーというより、準家族というかたちで出入りする女性の誕生日を祝う会。手近にあるもの集めて、誕生日プレゼントを作る。

フルコースのような牧野流手料理がつぎつぎと。4人で日本酒も一升瓶が空く。和牛の塊に塩、こしょう、ワインをすりつけて、炭火七輪で網焼きしたローストビーフがうまい。ハムサラダ、刺身、牧野夫人手製の柿の葉寿司と豪華で、どれもうまい。ちょうど牧野さんが『ここが私の東京』解説を執筆中で、9000字ぐらいになったのを削っているというので、それはそれでいいですよと言う。酒宴準レギュラーの編集者Eさんが、ちょうど『ここが私の東京』を読んだところだと、感想を。いろいろほめてくれる。松任谷由実の章は「『雨のステイション』から始まるところがいいです」と。頭の中で曲が鳴る。ユーミン屈指の名曲であろう。西国分寺駅へ行きたくなる。

川越さんぽ、「音羽屋」でコーヒー、文化の日だった。

11月3日快晴。少し暑いぐらい。ほとばしる埼玉県地元愛王の岩田くんと川越さんぽ。いやに人が多いなあと思ったらこの日「文化の日」で休日だった。「ブ」で待ち合わせ。探していた『梅安料理ごよみ』講談社文庫を見つけ、小さく「おお」と声が出る。あと1冊。

観光客の波が押し寄せる蔵造り一番町および大正浪漫夢通(ゲぇ!)を避け、裏路地、裏路地と散策。まだ古い建物がたくさん残っていて、足をいちいち留める。いい町だなあ。とにかく純喫茶だと、目星をつけていた音楽喫茶「アマンダ」(名前もいい)を目指すも店の前に立つと休業日。さっさとあきらめ、その近くの「音羽屋」(歌舞伎に関係あるのか)へ。入口に両開きする蚊帳が張ってある。小ぶりの、料理はない、コーヒー専門店。「T・モンジュール」590円を注文。なんじゃそりゃ。いっぱいずつ丁寧に淹れるおいしいコーヒーでした。マスターと常連客が「男はつらいよ」の話をしている。

カメラ、絵、「七人の侍」パンフレットなどたくさん展示している店。まったりして、旧川越城郭内跡地を散策。路地へ路地へと歩くと、行き止まりでまた元へ戻ったりするがかまわない。喜多院門前の和菓子屋(老舗)「紋蔵庵」でお土産(つばさかりん、川越ポテト)を買い、喜多院内を抜けていく(「どろぼう橋」の由来、楽し)。駅前まで戻り、カラオケをと思うが30分待ちであきらめ「王将」で打ち上げ。元社長暗殺の行方を案じ冥福を祈りながら(ウソつけ!)心置きなく餃子をつまむ。5時間コースとなった。裏路地と純喫茶がこれからも街歩きのテーマとなる。