流れていこう

泰平の休日、速達が届く。開けると、ある出版社からの依頼で、すぐ返答せよという。しかし、私はそんな話は聞いていないし、ギャラが発生するかも分からない。編集者も未知の人。無礼だなあ、出版倫理としてそれはどうなの、とむかっ腹が立つ。ああだこうだとごねても、勝手に本は出るだろうし、力なきライターの我はしょせん蚊帳の外である。

ちょっと怒りが収まらず、信頼する近しい編集者に電話して事情を説明する。彼は現在の出版状況を説明したうえで、「ちゃんと言いたいことは言ったほうがいいですよ」と言ってくれる。おまけに、進行中のプロジェクトについても新情報があり、それはいいやとうれしくなる。何度か大声で笑う。楽しいこと、やっていこうねと礼を言って電話を切る。やっぱり電話してよかったんだ。

こういうこと、最近、よくあるな。個人事業者としてのキャパが持ちこたえられなくなっている。一人傷つき、一人苦しむ(大げさに言えば、だが)。「魂は一つっきりなんでね」は谷川俊太郎の詩の一節(引用は正確にあらず)。淀んだ時は、水の流れにまかせて、流れていこう。

岩波文庫、木下杢太郎詩集を読む。