どこか遠くへ

昨日は家から出そびれた。いい天気だから自転車で多摩湖の方まで行ってみるか、などと考えながら家にいた。今月下旬に「新小説」(春陽堂書店ウェブマガジン)の対談連載(3回に分けて掲載)で、小田光雄さんに引き続き奥泉光さんと漱石について話をすることになっている。そのための準備として、漱石にずっと取り組む。費やす時間は膨大で、息が切れかけている。ほかにも読む本、考えることはたくさんあるからだ。

となると、やっぱり逃げだしたくなる。「青春18」をぼくは、がつがつ乗り倒すことはせず、まあ元が取れればいいかぐらいの緩さで使う。あそこへ行こうここへ行こうと机上で考えるのが楽しい。それですでに元は取れているほどだ。千葉方面へも行きたい。木更津はどうか。ずいぶん前、内房線で房総半島の先を目指したとき、木更津止まりで次の電車まで一時間近く時間待ちということがあった。そのとき少し街をぶらついた。「あなたのごはん見せてください」と言おうにも、まったく人に出会わない。朽ちた家や店の写真だけ撮ってきた。

また、ちゃんと歩いてみるかという気になったのは若菜晃子『徒歩旅行』というムック本を見たからだ。ここに「木更津」が取り上げられている。千葉ではここだけで、非常に珍しい。町の真ん中に矢那川が流れていて、すぐ港へ出られる。教会が二つある。明治創業の書店。人参湯という銭湯は休店。なにしろ取材時から10年以上たっている。橋をわたって中の島という小さな島へ渡り、そこが公園になっている。2時間ぐらいぶらついて、コーヒーでも飲んで帰って来よう。

古ツアさんとの古本旅はそれはそれで楽しいが、基本は一人。誰かいると気をつかうし、黙っているわけにもいかない。若菜晃子さんも旅の心得で書いている。「沈黙も道連れ」。「黙って歩くと、忘れていたなにかが心に蘇ります」と。ほんと、その通りだな。新潟県村上市もいいぞ、と思う。しかしこれは「大人の休日」向きだ。

さあ、仕事をします。