さあ『金沢』だ。あ、行くんじゃないんです。

春の雨はやさしいはずなのに、と小椋佳が歌ったが、やさしくない雨が朝から降り続く。3時ごろ、陽がさして、からりと晴れる。空気がきれいになったような。

家に閉じ込められて、おかげで本がバンバン読める、読める。ジャズをかけながら、受験生のように読む。おれ、一生、受験生みたいだな。来週、蔵書処分に完全防備で来てくれる盛林堂さんのために、通路をふさいだ、もう何がなんだかわからなくなった本の山を崩し、階段に積んでいく。1500~2000冊は出すつもり。一時期、熱心に古書展で蒐集した軟派随筆新書(200冊はあるか)も、全部放出。大処分もこれで3回目。どうだろう、あと今年中に3回ぐらい来てもらったら、かなりいい感じになりそう。

吉田健一『金沢』を読んでいる。じつは、これまで何度か挫折しているが、今回は、うまく小説の時間に乗れて、もう半分あたりまで行った。これ、やはり、すごい小説ですよ。幽玄にして明晰、文章の迷路にまよいこんだよう。簡単な話、映画化ができないだろう。やるとしたら、かなり話を作らなければならず、そうすると『金沢』の世界は消えてしまうんだな。ときどき、声に出して読む。