木更津へ

曇りの金曜日、「青春18」第二回を使って「木更津」へ。東京駅地下ホームから君津行き総武線快速が出ていて、これに乗れば1時間半で木更津へ。駅東口へ出て、観光案内書で「お散歩マップ」をもらう。目の前の商業ビルは元「そごう」。廃業したのを木更津が買い取ったようだが、さびれて目も当てられぬ状態に(市役所が入っている)。レンタサイクルも中止になったようで、歩くしかない。

木更津は川崎からフェリーが出ていた時は、港から木更津駅まで大勢の観光客が通ったのだと思われる。ぼくも新婚当時、家内とフェリーでこの木更津を訪れている。今は見る影もなく、とにかく人影がまったくない。バスを待っているいくばくかの老人たちを見かけたが、これは郊外のイオンモールへの送迎バスだった。1997年に東京湾アクアラインが開通し、木更津にジャンクションが出来たが、木更津駅周辺は素通り。フェリーも廃止された。いづこも同じ町の夕暮れ、が待っていた。もっと早く家を出ていれば、久留里線で「久留里」へも行けたんだ。今度は「久留里」へ行こう。

港まで歩く。途中さびれた食堂へ入ったが、ここは客がちゃんといる。たぬきの証城寺(そういえば、木更津駅の発着メロディーが「しょしょしょじょーじ」)へ。道を聞くため、歩いていたご老人をつかまえ、しばらく一緒に歩き、いちばん栄えた頃の木更津の話を聞く。神社や寺がやたらにあるのも、繁栄の名残りなり。

かつては栄えた色町っぽい風情の通りを歩く。赤い橋を渡り、矢那川沿いに港へ向かい、高さ25メートルという途方もない大歩道橋を渡って(高所恐怖所は厳禁)、中の島という芝生の小さな公園へ。また町へ戻り、旧市街を散策。まだ古い建物がたくさん残っていて、それは多く残骸ではあるが、歩きがいのある風景だ。ぼくはこういう淋しい町をしみじみと、つげ義春みたいな気分で歩くのが好きである(地元の方々にすれば大きなお世話)。

大きな空き地があると思ったら、廃業したホテルであった。「人参湯」という古い銭湯も建物のみ現存。明治創業という新刊書店「紅雲堂」は閉めていて「用がある方は連絡下さい」みたいな張り紙がある。人影が少ないのに、やたらに飲食店が多い町である。2時間ほどで、ほぼ町を見つくして、特急を除けば、1時間に2本の便にまだ時間があって、駅反対側(新市街)へ回り(こちらには立ち食いソバ、吉野家、コンビニ、カフェがある)、ベックコーヒーで15分ほど休憩。しかし、古い町(戦後の匂い)が好きな人にはお勧めの街だ。夏は各種祭りが開かれ、にぎわうようだ。そういう時は遠慮したいです。

帰り、高円寺で途中下車して即売会へ。こんなご時世に、マスクをせず、ゴホゴホやりながら本を見るご老人がいる。私はいちおうマスク(しかし息が苦しく、眼鏡が曇る)。ポリ袋に入った横長の、ジャック&ベティが表紙になった薄い小冊子を買う。なかを開けたら、英単語の筆記体の練習帳であった。未使用。150円均一の「古書ワルツ」の棚が、めちゃくちゃ売れていた。

次はどこへ行こうか。一度、新装なった小淵沢駅も見に行きたい。こんな気楽な62歳(もうすぐ3)がいるだろうか。