ドラマ版『歩く人』にがっかり

9日くもり。朝から準備して、午後曳舟へ。新潮社新潮講座担当のMさんと待ち合わせ、13日実施の「新潮講座」吉行淳之介『原色の街』を歩く、の下見へ。久しぶりに「鳩の街」商店街を歩く。かつて赤線があった。15年前ぐらいに訪ねたときは、まだそれらしい建物が散見できたが、ずいぶん新しく建て替わった。「百花園」がコロナ禍で休み、東向島東武博物館」が2時までと、がっかり。仕切り直して、ふたたび調査、研究し、白鬚橋から大正通りを通って東向島「玉ノ井」というコースを考える。費やした準備の時間のあまりの長さに気絶しそうになる。電車賃も1600円ぐらいになるか。割に合わぬといえばそうだが、自分の勉強とキャリアと考え、惜しまずやる。勉強は楽しくもあるのだ。

Mさんとの打ち上げは楽しく、あれこれ話す。「トキワ壮も一度やりましょう」とのこと。もちろん賛成。入った居酒屋で、Mさん、「なんか、変な男の声が聞こえませんか」としきりに言う。耳をすますと「はー、はー」と、その最中のようなため息が。「ほら、また」とMさんは気になるらしい。ぼくはそうでもない。注文を運んできた店員にかくかくしかじかとMさんが言うと、「となりが喫煙室で、その空調の音なんです」。なあんだ。帰り道は遠かった。墨田区は遠いよ。

谷口ジロー『歩く人』が連続でBS4でドラマ化され、それがBSでも4回分が放送され楽しみに見た。原作とドラマが同じになる必要はない。しかし、やっぱりがっかり、だったなあ。原作では清瀬在住の谷口が、自分の散歩みちをモデルに、主人公を日常から地続きのライトな冒険心に連れ出すさまを描いたところに妙味があった。これはもうめちゃくちゃいいです。しかし、ドラマでは甲信越から東日本の絶景スポットに、空間移動したごとく主人公を置く。書いていた住所から清瀬市在住と分るだけに、あれ、いつのまにと不審が残る。ありがちな食事シーン、BGMや余計なナレーションをつけない点は買うが、これは似て非なるものになった。録画しておいたが消してもいいか。原作の雨中の銭湯、夜中しのびこんだ学校プールの水泳、健脚の老人との抜きつ抜かれつなど、お茶の味が消えてしまった。仕方ないのかなあ。アニメのほうがよかったのではないか。